「現場で頑張っている従業員のために食事代を会社で負担してあげたい!」
「昼食代の補填をしてあげたい!」
と、中小企業の社長から相談を受けることがあります。
従業員の処遇・モチベーションもあがり、会社にとってもメリットが見込めると思います。
しかし、ただ補填と言っても従業員のために払ったお金が給与として扱われれば
所得税の課税対象となってしまいます。
支給する方法によって、従業員の給与の所得税として課税されるか否かが変わります。
課税されると給与計算にも影響が出てくるため、注意が必要です。
今回は、従業員のために会社で食事代を負担する時、どのような方法があるのか、
所得税は課税されるのかを4つのパターンに分けて見ていきます。
① 食事手当として月額給与に加算する場合
まずは、食事手当を従業員の給与に加算してに支給する方法です。
「1日あたり500円」や、「月額5,000円」など決まった額を食事手当として
給与に加算して支給することとなります。
この場合、取り扱いは以下のようになります。
会社側:経費となります。(給料として処理します。)
従業員側:収入扱いとなるため、食事手当を含めて所得税の課税対象となります。
【なぜ収入扱いになるのでしょうか?】
理由は、食事手当として支給していても、食事をとらなければ現金をそのまま受け取って自由に使えるのと同じであるためです。
要するに通常の給与と同じく、従業員が自由に使い道を決めることができるからです。
さらに、社会保険料の標準報酬月額を算定する場合においても、
食事手当も含めて算定するため、社会保険料も増えることになります。
金銭でもらえることは従業員としては満足度も高くなることでしょう。
② 食事代のレシートをもらい実費精算する場合
次に従業員から食事代のレシートを提出してもらい、実費精算する場合です。
給与に加算する①のパターンとは違い、実費精算のため所得税の対象とならないと思われがちですが、
結論、実費であっても原則所得税は課税されます。
※例外として、残業や宿日直(夜勤等)の時の食事代については
所得税の課税の対象ではありません。
ただし、一定の要件を満たすことで昼食代の実費精算でも所得税が課税されないようにすることが可能です。
【要件】従業員が食事代の半額以上を負担し、
かつ会社が補填する額(実質支払額)が月額3,500円以内の場合には
所得税の課税されません。※この3,500円は消費税抜きの金額で判定します。
会社側:経費となります。(要件を満たさない場合は給与として取り扱われます。)
従業員側:要件を満たさなければ所得税の課税対象となります。
③ 遠方の現場の場合に、出張手当として支給する場合
お次は出張手当として支給する場合です。
現場が遠方である場合には、出張手当(日当)として現金支給しても所得税の課税はされません。
②で説明した「所得税が課税されない要件」のように「いくらまでならOK]といえる明確な数字はありません。
常識的なルールで常識的な金額であれば実務上問題ないと言えます。
「常識的」が曖昧なまま進めてしまうのはリスクがありますので、
会社側には「出張旅費規程」の策定をおススメいたします。
作成した「出張旅費規程」に合わせて支給額を決定するのです。
会社側:経費となります。(旅費交通費等)
従業員側:収入としては取り扱われず所得税は課税されません。※常識的な範囲で支給する場合に限る
④ 打合せを伴う食事の場合
最後は打ち合わせや会議をしているときの食事代を会社が負担した場合です。
現場での「打ち合わせや会議を伴う食事代」は従業員への支給とならないので、
所得税は課税されません。
打ち合わせや会議が「業務の進捗に必要で、そこに食事が介在した」時になります。
例えば、
現場が忙しい中で「昼食時しか打ち合わせができない」ケ-スがあれば、
会社の経費として計上ができます。
この場合には、通常の打ち合わせや会議と同様に
「誰と、何の打ち合わせ」という内容を、
レシートの裏などに明確に記載をする必要があります。
会社側:経費となります。(会議費・交際費等)
従業員側:収入としては取り扱われず所得税は課税されません。
まとめ
①食事手当として支給する → 所得税は課税される
②食事代を実費精算 → 所得税は課税される
(※半額以上を従業員が負担する時や月額3,500円以内の時は所得税は課税されない)
③出張手当を支給する → 所得税は課税されない(※「出張旅費規程」が必要)
④打ち合わせや会議の時の食事代 → 必要性・必然性があれば会社の経費になる。
4つのパターンについてご説明してきました。
所得税が課税されるとは言え、
①のパターンが従業員には意外と喜ばれるのではないでしょうか。
会社から見れば払う金額はそんなに変わらないはずですが、
従業員の中には「お給料が増えた」と考える人もいるかもしれません。
みなさまはどの方法をお選びになるでしょうか。
迷った際にはぜひ、税理士法人ウィズにご相談ください!