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2024年6月27日

売上の計上基準とは?~注意が必要なネットショップの経理~

自社の商品・製品を販売した際、何日付で売上計上したらよいのか迷ったことはありませんか?

いつもニコニコ現金払いなら、

商品の引渡しやサービス提供と入金が一致するため、迷うことはないでしょう。

ですがネットショップなどは、必ずしもお客様と直接相対して商品を売るとは限りませんよね。

入金の後に商品を渡したり、宅配便で送ったりと様々な商品の受け渡しがあります。

特に、運送業者さんを介した場合は、

・自分が送った日 ・先方に届いた日 ・入金された日

などなど、売り上げを認識すると思われる日はいくつか存在します。

どのタイミングで売上計上するべきなのかを見ていきましょう。

(1) 売上の計上基準は?

まず、売上計上基準とはどういうものかを見ていきます。

売上の計上基準とは、簡単に言えば、”売上計上をいつ時点で行うのかのルール”です。

売上の計上時期なんていつだっていいじゃないか!と思う方もいるでしょう。

ですが、売上を計上する基準が決まっていないと、決まった会計期間の中で、

「この売上は入金があったから」や「この売上は商品を渡したから」など様々な理由で売上が計上されてしまい、

”正しい売上高”を導くことができなくなってしまいます。

経営者・株主・金融機関の方が業績の推移などをチェックする際、

各月の計上方法が違っていたらどうでしょう。情報の精度が落ちてしまいますよね。

ルールがなければ会計期間を恣意的にまたぎ利益調整もできてしまうため、

売上の計上基準は企業の利害関係者にとって、とても大切な役割を果たしているんです。

売上計上基準は『実現主義』に基づいています。

企業会計原則では

『すべての費用及び収益は、その支出及び収入に基づいて計上し、その発生した期間に正しく割当てられるように処理しなければならない。

ただし未実現収益は、原則として、当期の損益計算に計上してはならない。』

とされており、特に

『売上高は、実現主義の原則に従い、商品等の販売又は役務の給付によって実現したものに限る』
とされています。

(2) いつの時点で『実現』したと考える?

前章では、

『売上高は、実現主義の原則に従い、商品等の販売又は役務の給付によって実現したものに限る』
とされている旨をご紹介しました。

『実現』とは一体いつのことを指すのでしょうか?

『実現主義』というと、専門用語的で難しく感じる人もいるかもしれませんが、意外とシンプルです。

実現の定義は大きく3種類あります。

3つを都合のいいように採用するのではなく、企業は下記の①②③のいずれか1つの基準で売上を計上しなくてはなりません。

① 発送基準・・・商品を発送した日で売上計上する

② 引渡基準・・・商品が相手の元に届いた日で売上計上する

③ 検収基準・・・相手が商品の検収(中身の確認)を完了した日で売上計上する

企業会計原則では

『その処理の原則及び手続きを毎期継続して適用し、みだりにこれを変更してはならない』

としており、企業が1度決めた売上計上基準をいつでも好きに変更することはできません。

毎期継続して同じ基準で売上を計上しているならば、いずれの処理も『実現主義』に沿った処理と考えられます。

(3) 入金日はダメ?

売上の計上基準は「①発送基準」「②引渡基準」「③検収基準」とお話ししました。

『あれ?お客さんから集金した日じゃダメなの?』

と思われた方もいるのではないでしょうか?

確かに商品を送った、受取っただけでは商売になりません。商品の対価を回収して初めて商売として成り立ちます。

でも特別な販売形態の場合を除き、商品の受け渡しの時点で売上は実現したと考えられるため入金日での計上は認められません。

💡入金時に売上とするのはNGです!

(4) まとめ

(1)売上の計上基準は『実現主義』

(2)「①発送基準」「②引渡基準」「③検収基準」の 3 つの基準で考える

(3)入金日での売上の計上は認められない。

売上計上基準について見てきましたが、いかがでしたでしょうか。

一口に『実現主義』と言っても、正解は1つではありません。

昨今では様々な販売形態があります。売上計上基準で迷ったときは、専門家に相談することをおすすめします。

計上する売上の金額に関する注意点をまとめたブログも掲載しておりますので、こちらも是非ご覧ください。

【3分で学べる経理処理】入金額で売上計上していませんか?売上計上の落とし穴!

※なお令和3年4月1日より『収益に関する会計基準』が導入され、従来の『企業会計原則』に優先して適用される基準として位置づけられていますが、

中小企業の会計処理については従来通りの企業会計原則等による会計処理が認められることとされていますので、本文は中小企業を前提として掲載しています。